[A-023] Rupert Hine - Waving Not Drowning ('82)
今回(と次回)は冷静には書けないと思う。何しろTodd Rundgrenに続く私の神様である(笑)。しかし、Toddに比べればこちらは幾分マイナーだろうか。Rupert Hine (Vo,Key,Dr) は、世間的にはどちらかと云えばRushやHoward Jones、Tina Turner他のプロデューサーとして名を知られているかも知れない。しかしその音楽性、その声、そしてその長い顔(笑)は、一度触れれば強烈な印象を残す、独特の個性を持っている。
…とまあ、こう書いてはいるが、私自身、実は彼の正体は掴めずに居る。良く居る『英国産ひねくれ変態ポップ職人』であると切ってしまえばその通りなのだが、何と云うか、ルーツが見えない。例えば、大抵のそれら変態職人たちがリスペクトするのはBeatlesであり、アメリカの5~60年代のポップスやソウルであったりする。しかし彼の音楽からはそれらが見えない。…いや、強烈な個性がそれを覆い隠して、こちらを記憶喪失に陥らせ…ている…カンジがする(笑)。
その時代の最新のテクノロジーを用いたそのアレンジが、まず彼の音楽を独特たらしめているひとつだろう。特にこのアルバムではシンセサイザーによる電子音とサンプラーによる現実音、そしてその個性的なヴォーカルで、独特な迷宮的な世界を構築している。
一曲目の『Eleven Faces』はサンプリングによるパーカッシブな声と、重層的なコーラスの多重構造を持つミニマル・ポップで、どこかTalking Headsの『Remain in Right』のコンセプトと似通ったモノを感じさせるが、こちらの方がより『奇妙』だ。『ユーモラス』でさえある。
四曲目の『Dark Windows』は雷鳴と雨の音がリズムを刻み、そこにピアノとシンセが絡んだバラードだ。曲の上空には壮大な自然空間が広がる。…現実音で構成された楽曲で、ここまで『ポップとして』完成度が高い作品を私は知らない。そして、はっと我に返れば、それはやはり『奇妙』で『ユーモラス』なのだ。
『Innocents in Paradise』のマリンバ音によるパーカッシブなシークエンスや、『The Outsider』のアンビエント・ノイズ、そして電子音によるリズムで進み、ラストのPhil Collinsによる凄まじいフィル・イン・ドラムで一気に頂点に駆け上がる『One Man's Poison』等、このアルバムの曲はどれもこれも『奇妙』で、そしてどことなく『ユーモラス』であり、そのどれもが『ポップとして』非常に完成度が高いことに驚かされる。
『アヴァンギャルド』ではない、『実験』ではない、『投げっ放し』ではない、『アクロバットの末の見事な着地』=『オルタナティブ』を、彼は見せてくれる。見えないルーツからすっと現れて、そしておそらく静かにずっと。…ニヤリ、と笑いながら。
その他のアルバム
Rupert Hine - Unfinished Picture ('73)
2nd。今で云うアシッド・フォークから、エレクトロニカ、暗黒チェンバー、Penguin Cafe OrchestraのSimon Jeffesが参加したミニマル・アンビエント、と何だか判らないがブッ飛んだアルバムを締めくくるのは傑作バラード『On the Waterline』。Michael Gilesのドラムスがイイ。
Thinkman - Formula ('85)
あのRupert Hineがバンドを結成!…と思いきや、イケメンをダミーのメンバーに据えてのワンマン・バンド(笑)。詐欺だ(笑)。
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