2011/12/24

[A-024] Anthony Moore - World Service ('81)

年内の更新はおそらくこれで最後になるかと思う…と同時に、『オルタナ☆ポップ★ガイジン編』も今回で一応終わりの予定。次は『オルタナ☆ポップ★ニホンジン編』をしばらくやろうかなと。でもって、新年一発目は2011年のベストもやってみたいなあ…予定は未定ですが(笑)。


[A-024] Anthony Moore - World Service ('81)



今回(と前回)は冷静には書けないと思う。何しろRupert Hineに続く私の神様である…と、何だかデジャ・ヴな書き出しで始めてみる(笑)。…しかしながら最初にことわっておくと、今回このアルバムは(現行の)CD化に際して全体的に改変が加えられてしまっている。曲の追加やジャケットや曲順が違うのはまだ良いとして、アレンジまで大幅に変更してしまった楽曲もあるので、今回書くのは飽くまで『オリジナル・アナログ・バージョン』についてである事をご承知置きの程を。

彼はドイツを舞台に音楽の実験を重ねて来たイギリス人だ。70年にドイツに渡り、クラウトロックの雄Faustと親交を持ち、実験音楽のアルバムを製作。その一方で、ドイツ人女性ボーカリストDagmar Krauseやアメリカ人の音楽家/詩人Peter BlegvadらとSlapp Happyを結成、サイケなフォーク・ロックを奏でたりもした。このバンドは後にあのレコメン系プログレの雄Henry Cowと合流する。

ドイツに渡ってクラウトロックの連中とつるむイギリス人実験音楽家なんて…ヒネくれてないワケが無い(笑)。このヒトは最初から曲がっているのだ。それが証拠に作るアルバムはことごとくお蔵入りになっている。『スタジオを掃除している時の音』を収録したアルバムなぞ売れるのだろうか(笑)。実は後年発売されたのだが、このわたしでさえ恐ろしくて聴いていない(笑)。

そんな彼もレコード会社と契約を新たにして、さて、一応は売れる…いや、出せるアルバムを作らなくてはならない(笑)。…いや、実は既に一枚、蔵に入ってしまった(笑)。…こう、ヒネくれたヒトが追い詰められた時ほどワクワクすることは無い。それは、彼がいかにも『素直』の皮を被るからだ。そして、出てきたのは見事なポップ・アルバム…いや、それは本当に、これまでの実験音楽での混沌を縦横に敷き詰めて、その上に力強いリズムとシンプルなメロディを盛った、ちょうど当時流行りのニュー・ウェーブを分析して展開して再構成してみせた様な、『素直』の皮を被った『見事なポップ・アルバム』だったのだ。

発売された三枚のポップ・アルバムは『Anthony Moore』ではなく『Anthony More (A.More)』名義だったりするのも、本人的には忸怩たるものが有ったのか、それとも、シレっと『素直の皮』に別名を与えたのか…。その一方であの伝説のオルタナティブ・ロック・バンドThis Heatの1stを、ヒットは出せど同じ様な資質を持つFlying LizardsのDavid Cunninghamと共同プロデュースする等、皮の下ではまるで反省していない様子ではあった(笑)。

どこか初期Talking Headsを彷彿とさせる、少々パンク風味の『Flying Doesn't Help』('79)、あの英国の国民的歌手と云われたPaul Youngにカバーされた曲も収録した、少々デジタル風味の『The Only Choice』('84)に挟まれた本作は、まさしく塩梅よろしい『オルタナ・ポップの金字塔』だと、まあ多分、世界でわたしだけが思っている(笑)。特に終曲、『Nowhere to Go』の、まるで現代音楽の様な複数のギターとパーカッションとノイズをバックに切なく歌い上げる皮を被ったA.More氏が、タイトル通りの彼のやるせなさを表している様で、ぎゅうと胸に迫る。

…で、それがCDバージョンだと最後じゃなくて、しかもテンポがアップして、ベースが入ってドラムが入って女性コーラスまで入って、何ともホントに『普通』のポップになっちゃってるんだなこれが(笑)。Moreさん皮被り過ぎ(笑)。


その他のアルバム

Anthony Moore - Pieces from the Cloudland Ballroom ('71)



Faustのメンバーも参加したデビュー作。メインの曲は、ピアノのコード音をバックに呪文のような歌詞を男女の歌手に延々歌わせて、あまりの無意味さに歌手本人がバカバカしくなって笑い出してしまうのも音楽の一要素として扱う等、『ハプニング・アート』やDavid Cunninghamの『エラー・システム』を彷彿とさせる実験音楽。

Arp, Anthony Moore - Frkwys Vol. 3 ('10)



2010年発表の、若いアーティストとのコラボ・アルバム。静謐なミニマル・アンビエントの最後に、Slapp Happyの名曲『Slow Moon's Rose』が再演されてたりして、不意打ちにちょっと泣きそうになった。

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