2011/11/09

[A-019] Kraftwerk - Computer World ('81)

もう11月、恐ろしいことに今年も終盤に差し掛かっている。しかしながら、今年を振り返るのはもう少し先にしたい。…まだまだ何か有りそうだ(笑)。怖いこと云うなってか(笑)。


[A-019] Kraftwerk - Computer World ('81)



ヒトは自分の体臭には気付きにくい。ヒトは自分のクセには気付きにくい。表現者は得てして自分の『個性』には気付きにくいモノだ。

Kraftwerkはその初期に、後のNeu!となるギター(Michael Rother)とドラム(Klaus Dinger)を失い、Florian Schneider (Synth,Flute,Vln)とRalf Hutter (Vo,Key,Synth)による電子楽器とエフェクター、ノイズを用いた実験的でメンタルな音響工作を続けて来た。実は当時のジャーマン・ロック・シーンには、そんなバンドやユニットはゴマンと有ったのだが、その中でも彼らは失われた『ロック』的なエモーションを渇望していた様に思える。しかし、電子音やノイズのみの人工的・無機的な音から、それらをコンセプトとして頂く様になった手前、今更ロック・バンドにも出来ない(笑)。律儀なドイツ人らしい矜持なのかも知れない。

じゃあと云うことで、当時のアナログな機器を用いてロック・バンドをシミュレートし始めた。初期のリズム・ボックスをバラして、端子を叩いて音を出しエレクトリック・パーカッションとした。ヴォーカルは電子エフェクターであるヴォコーダーを通して音質を変え音程をコントロールして、コンセプトに沿った無機的なニュアンスを演出した。楽曲からも情動は配し、均質なリズムにひたすら繰り返す単純なメロディーを乗せた。

で、これが大ヒットしてしまうのである(笑)。この楽曲『Autobahn』は、いびつなロックどころかダンサブルなディスコ・ミュージックとして受け止められたのだ。一番驚いたのは彼らであったろうと思う。自身でさえ判らなかった鉱脈を掘り当てたのだから。

メンタル・ミュージックとしての方針に未練を残しつつも、エレクトリックでミニマルでリズミックな楽曲を発表しているうちに、自らの音楽が巷で『テクノ・ポップ(エレ・ポップ)』とカテゴライズされていることに気付く。世界中でフォロアーが出て、しかも各国のヒット・チャートを賑わせていたりもする。

多分…まあ、今まで書いている事も殆ど憶測と妄想ではあるけれども(笑)…多分、彼らはそれら『テクノ・ポップ』を聴きまくった。自分たちが知らずに作り上げた世界を自ら探って、自身にフィードバックさせたのだ。このアルバム『Computer World』は、そんな学習の成果なのだろう。均質ながらもハネるリズム、16ビートを刻むシンセ音、シンプルながらもファンキーなベースライン。イギリスのエレポップ勢や日本のYMO周辺、アメリカのヒップホップ等に多用されている常套句ではあるが、さらにそれをシンプルに無骨に、そしてなにより無機質・無感情に仕上げられた、正に『再発見された原器』とも云える作品である。

そして彼らは初期のメンタルな実験を繰り返した諸作品を封印してしまった。今に至るまでデジタルメディアでのオフィシャルな復刻は為されていない。その他の作品もリマスタリングを施し、メンバーの姿を消すなどジャケットを変更、一部は収録曲やタイトルをも変え、既存の歴史を塗り込めてしまった。自分たちの逡巡を許せない、これもドイツ人らしい矜持なのだろうか。


その他のアルバム

Kraftwerk - The Mix ('91)



アルバム『Autobahn』('74)から『Electric Cafe』('88)までの代表的な楽曲を90年代風にリアレンジして収録したベスト盤的な作品。Kraftwerkで何か一枚と云われればこれを薦める…のは邪道だろうかね。

Elektric Music - Esperanto ('93)



Kraftwerkを脱退したKarl Bartos (Vo,Key,Electric Percussion)のワンマン・ユニットの1st。正しく『Kraftwerkの進化系』であり、特にエモーショナルな面は彼の資質に負うところが大きかったのでは、と思わせる。

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