[A-018] Robert Wyatt - Nothing Can Stop Us ('82)
まず云ってしまうが、Robert Wyatt (Vo,Key,Per)は半身不随の元ドラマーである。『カンタベリー系』と云われるサイケデリックなジャズ・ロックのムーブメントの中心的存在だった伝説のバンドSoft Machineの初代ドラマーとして、シンプルながらもユーモアとバイタリティ溢れるプレイを残した、素晴らしいドラマーだった。
彼は事故によりその様な事態になったのだが、それがどの様な事故であったのか。Wikipediaを見てみると、『パーティの席上で、テキーラとウィスキーを飲み酔ったまま5階から転落して重傷を負い、その後遺症で下半身不随となる。』とある。ロック・ミュージシャンらしいと云えばそうなのだろうが、何とも口惜しいことだ。
実は、うろ覚えながらもわたしが聞いていた話とはちょっと違う。…いや、同じなのかも知れないが、『家で子供とかくれんぼをしていて上階の窓の外に隠れたが、そこから落ちた』と云うものだ。…いやいや、笑ってはいけない。だがしかし、彼のユーモラスな人柄としっくり来る様な気がして、その悲惨な現実とは別に僅かこころがほのぼのとしたのを覚えている。
このアルバムは、ヴォーカリストとして復帰後、80・81年のシングル曲を集めたものだ。実は彼は熱心な共産主義者であり、このアルバムも最初は『Agitation』と名付けられるはずだったと覚えている。しかし、内容はポップだ。政治的主張も有るが、カバー曲を中心としている為かアジテーションと云う程の激しさも無い。極限までシンプルな演奏に、透き通る様な歌声が響く。
しかし、その視線が南米やアフリカ諸国の圧政や人種差別への批判に向いているのは確かであり、第三世界のミュージシャンによる演奏も収められている。『自由』が失われたからこそ、何かを変えようとする熱量が、『主張』を、『歌』を、届けようとする力を持ち、彼の場合、それが『肉体の自由』だった。…と云っては、身も蓋も無いか知れないが。
彼は民衆の力を信じている。熱い意思を以って、『Nothing Can Stop Us』と彼が煽っているのは民衆である。『革命』だ。しかしそれは『終末思想』にも似ている。全ての悪しき『現実』を終わらせる為に、彼は歌い続けているのだろうか。
その他のアルバム
Robert Wyatt - Rock Bottom ('74)
事故後の復帰作。名曲『Sea Song』にて、オルガンを中心としたシンプルなバックとヴォーカルと云うスタイルが確立した。
Soft Machine - Volume Two ('69)
ドラム/ヴォーカルとして在籍したサイケデリック・ジャズ・ロック・バンドの2nd。クールでモンドでちょっぴりキッチュな名曲揃い。
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