[A-015] Talking Heads - Remain in Light ('80)
『アクターズ・スタジオ (The Actors Studio)』と云うアメリカの俳優養成所が有る。俳優・演出家のLee Strasbergが指導に当たっていたのだが、この養成所からは数多くのスター俳優が輩出され、70、80年代の銀幕を彩った。Al Pacino、Robert De Niro、Dustin Hoffman、…錚々たる面々であるが、しかし、皆どこか『オカシイ』演技をする(笑)。
『リアルな演技』とは何か。Lee Strasbergが考えた末、導き出したのがこの『偏執的』『神経症的』な所作に基づく演技であり、それこそが、その時代の『リアル』であるとの結論に至ったのであろう。ただ単に、今現在を生きる人間から見れば『オカシイ』と云うだけのハナシなのだ(笑)。
Talking HeadsのヴォーカルDavid Byrneの歌を聴くと思い起こすのが、そのアクターズ・スタジオの俳優たちの演技だ。『正常』であろうとして狂的な努力で自らを戒め続ける文字通りの『必死』が、その声に異様な緊張感を纏わり付かせている。
『Remain in Light』はオルタナティブ・ミュージックの大御所Brian Enoによるプロデュースで世に出た、出自であるパンク/ニュー・ウェーブ・サウンドからは掛け離れたファンク・サウンドだ。Fela Anikulapo KutiやKing Sunny Adeらのアフロ・ファンクから影響を受けたと思われる、ワンコードで延々と突っ走るミニマルな演奏に、重層的なコーラスが響き、その上にDavid Byrneの説教ともアジテーションとも付かない煽情的なボーカルが乗る、斬新かつ肉体的な音楽だった。
しかしそこには、『アフリカ』や『ファンク』に輝いているはずの『太陽』は無く、蛍光灯の下で正常な日常を送ろうと『必死』な現代人の冷ややかな汗が流れる。『都会の孤独』と云ってしまえばロマンチックに過ぎるが、例えれば『アメリカン・ニューシネマ』と同じ『苦さ』が耳に残るのだ。
彼らは果たして何を求めて突っ走ったのだろうか?…花嫁を奪い、バスに乗って輝ける『日常』を手に入れる為なのか…。それともそこには、カリフォルニアの太陽を夢見ながらも、バスの中で息絶えてしまう『絶望』が待っているのか…。このアルバム後、まるで憑き物が落ちたかの如くアフロ・ファンクを捨て去り、ポップになった彼らからは、何か求めていた『日常』を手に入れた様な幸福感を感じてしまう。そしてわたしは、そんな彼らにはあまり興味が無い(笑)。
その他のアルバム
Talking Heads - The Name of This Band is Talking Heads ('82)
77/78年のオリジナル・バンドでのパンク/ニュー・ウェーブ期と、80/81年のビッグ・バンドでのアフロ・ファンク期のライブをそれぞれ収めた二枚組ライブ・アルバム。後者はもちろんだが、前者にもそこはかとなく漂う乾いた『黒さ』が、「ああ、アメリカのバンドなんだなあ」と思わせてくれる。
Talking Heads - Stop Making Sense ('84)
83年のライブを収録したJonathan Demme監督の映画のサントラ。Tina Weymouth (B,Vo,Key)がカワイイんだなこれが(笑)。
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