2011/08/28

[A-010] Ben Watt - North Marine Drive ('83)

イザ窮地に立たされるって時に、誰に迷惑を掛けようが何もかも捨てて無責任に逃げ出せるヤツは強いねえ。そしてそんな奴の説教を電波を使って延々タレ流してた方も、面白がって聞いてた方も、ぽつねんと置いてきぼりで滑稽だ。まあでも、誰も懲りずに、またまた新しい教祖様を探し始めるんだろうなあ…。


[A-010] Ben Watt - North Marine Drive ('83)



『パンク』は『ニュー・ウェーブ』へと進化し、やがて『ネイティブでは無い方法論』を用いての、文字通り『オルタナティブ・ミュージック』としての成就への道を探る事になる。その方法論は、当時発展を見せたエレクトロニック・テクノロジーを用いたモノや、『非楽音』で楽曲を構成する等、さながら『百鬼夜行』の如く、様々な実験がそこここで試みられてた。

そして、その中に、オーソドックスでアコースティックな方法論を用いる人たちが出て来た。それは主にレコードレーベルで特徴付けられていて、Aztec Camera等のPost Cardレーベル、The Pale Fountains等のCrepusculeレーベル、そして彼、Ben Watt (Vo, G)等のCherry Redレーベル、その他だ。

それは傍目にはその様な『百鬼夜行』状態への反動の様にも見えたが、確実に『パンク』の暴力的、衝動的な情動を通過した者でなければ出せない、屈折しながらも突き抜けた音だった。それは彼らなりの『オルタナティブ』だったのだ。

このアルバムも、音だけ聞けば単なるアコースティックギターによる弾き語りだ。フォークも有ればボサノヴァも有るが、全編非常にシンプルなモノだ。しかし、そのギターに対する深いリバーブ成分、内省と直情を交互にする歌唱、そのプロダクションには明らかな『オルタナティブ』が見え隠れする。

このアルバムに先立ち、あのカンタベリー・シーンの大物、Robert Wyatt (Vo)との共作『Summer into Winter』('82)を発表するなど、飽くまで彼は、今までに無い『何か』を産み出そうとしていたのは明らかだと思う。その為の武器が、『ギター』と『声』だけだったのは、事故で半身不随になったドラマー/ヴォーカリストだったWyattが、その声を最大限に生かす為、敢えて非常にシンプルな楽曲構成にしていた事からヒントを得ていたのだろうか。

やがて、彼らが興した『ネオ・アコースティック』ムーブメントは、ポップに取り込まれ、消えて行く。瑞々しい、一瞬の輝き。鬱屈とした、青春そのものの息遣い。…当時の邦盤キャッチコピーもそんなのばっかだったが(笑)、今でもそれら『ネオ・アコ』を聴くと、そんな気恥ずかしい『美学』みたいなモノに図らずも頷いてしまいそうな、そんな気分にさせてくれる。


その他のアルバム

Everything But The Girl - Eden ('84)



Ben WattがTracy Thorn (Vo, G)と共に結成したジャジーなアコースティック・ポップ・ユニットの1st。時を経て、何故かエレポップ・ユニットになってしまう。

Tracey Thorn - A Distant Shore ('81)



Everything But The Girlの盟友兼彼女のこれまた全編弾き語りの1st。Everything But The Girlの『Amplified Heart』('94)のジャケットで見せた彼女の無乳ぶりが未だに忘れられない(笑)。

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