2012/09/30

[A-049] V.A. - No New York ('78)


夏の終わりと云うか、既に秋の始まりとなってしまったBrian Eno特集第三弾。実は後々、もう何枚か関連作を紹介する予定。しかし次回でやっとこさ半分だよ…。まだまだ先は長いねえ…。


[A-049] V.A. - No New York ('78)



『パンク・ロック』とはつまり、『過激化したロックン・ロール』だ。特に発祥の地であるアメリカはニュー・ヨークに於いてその傾向が強く、そもそも70年代半ば、Ramonesを始めとするバンドが、過激で過剰な音響やアレンジでロックンロールを奏でて、それが『パンク』として認識された。Sex Pistols他のロンドン・パンク勢もそれに続いたが、両方とも着地点は飽くまで『ロックン・ロール』であり、『破綻』は有るとしても最終目的地はそこだった。、

だが、やがてそれを目的としない一団が出て来たのだ、彼らは、『パンク・ロック』の、或る意味完成され、様式化されたフォルムから、ごそっと『ロックン・ロール』を抜き取った。ここで登場するのが我らがBrian Enoである。彼らの音楽をざっと見渡したEnoは、この、当時の前衛であった『パンク・ロック』にさえ属さない、得体の知れないぎすぎすとした『音楽らしきモノ』を、一枚のアルバムにまとめた。それがこの、78年に発表されたコンピレーション・アルバム『No New York』である。

ここでは4組のアーティストの曲がそれぞれ4曲づつ収められている。Contortions (James Chance)、Teenage Jesus and the Jerks (Lydia Lunch)、Mars、DNA (Arto Lindsay)。彼らの曲はどれも、破壊的で、衝動的で、快感原則から目を背けた、あらゆる音楽から隔絶したモノの様にも思える。そんな音楽の一群を後に『No Wave』と呼ぶようになるのは、なるほど、彼らの音楽を象徴しているのかも知れない。しかし、本当に彼らの音楽は『破壊』と『衝動』だけで『ルーツ』が無いのだろうか。

例えばContortionsが自棄的なヴォーカル、金切り声を上げるサックス、不協和音を叩きつけるオルガン、暴れまわるスライドギターによって奏でてるのは、敬愛するJames Brownの『I Can't Stand Myself』なのだ。ライブではMichael Jacksonの『Don't Stop 'Til You Get Enough』も同様に演奏された。そして、そのライブの冒頭、彼らはこう紹介されるのだ。「キング・オブ・ウルトラ・ソウル!」。

DNAも、Arto Lindsayのチューニングされていない12弦ギターが掻き鳴らされるが、それは彼が幼少時から青年期までをを過ごしたブラジルの民族楽器にヒントを得ている。後年彼は穏やかなボサ・ノヴァに傾倒するが、そのエッセンスは既にこの破壊的な音楽に現れていた。

つまり彼らは、彼らなりの嗜好やルーツを『過激化』したのだ。『過激化』された、『オルタナティブ』な、『ロック』ではない、『何か』。『No New York』『No Wave』の『No』は、単なる否定では無い、実に豊かな響きを持っている。


その他のアルバム

James Chance & the Contortions - Soul Exorcism ('80)



オリジナルはカセット・テープでのみ発売された80年のオランダでのライブ。『No New York』ではギクシャクと突っ走った彼らが、ここでは実に手馴れた熱いファンクを聴かせてくれる。…のだが、James Chanceのボーカルとサックスだけは相変わらず無軌道で暴力的だ。暴力的過ぎてテープが切れてしまった(笑)。

DNA - DNA on DNA ('04)



70年後期からの彼らの音源の殆どを網羅したアルバム。ヒステリックなArto Lindsayのギターとボーカルを時に煽り、時に宥めるドラムとオルガン/ベース。

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