2012/08/19

[A-046] Massacre - Killing Time ('81)

来年の夏までには終わらせたいよホント。暑さの中モノを書くのがいかに苦行であるか…。いやまあ、冷房入れれば良いんだけれどもね…いやまあ、大体エアコンの無い部屋にPCが有るのがオカシイのであるけれどもね…(笑)。


[A-046] Massacre - Killing Time ('81)



70年代から80年代の僅かな期間を除いて、『ロック』はギターの圧政の下にある。今現在でもギター・ロックやギター・ポップは花盛りだ。そして何故か、そんな『ギター・ミュージック』の下では、往々にして『ヴィンテージ』と云う名の回顧の中に音を探り、過去のフォーマットの中に自分たちの音楽を作り上げ、蓄積された音楽の遺産の『引用』をして涼しい顔をしている。かくて、音楽は『進化』を辞めてしまった。

では、80年代、『ロック』はどこまで行ったのだろうか。Massacreは英プログレ・バンドHenry CowのFred Frith (G,Vo,Key)、NYのオルタナ・ジャズ・ユニットMaterialのBill Laswell (B,Tp)とFred Maher (Dr,Per)によるトリオである。編成だけ見ればいわゆる『ロック・トリオ』であり、ポップであろうとテクニカルであろうとダンサブルであろうと、いわゆる『ロック』の範疇から外れそうも無い。

ところがである。この彼らの1stアルバムを聴いてみると、何を思ったのだろうか、それぞれがそれぞれの役割を果たそうとしない、実に無責任なプレイを繰り広げるのである(笑)。おそらく、予め作曲されているのは半分にも満たないであろう。大部分はインプロヴィゼイションであろうと思われるが、その方法論も尋常ではない。

音色、フレーズ、奏法、どれを取ってもおよそ『楽器の機能』として用意されたフォーマットを拒否して、その皮一枚外側を奏でる。ギターもベースもドラムも、最早『物音』とまで云えるレベルまで『退化』してしまうのだ。『物音』が、まるで『ロック』の様なタイミングで、『ロック』の様なダイナミズムで、鳴り響く。まるで、異星人が見よう見まねで演奏する『ロックのパロディ』だ。

しかし、じゃあその音楽は何なのだろうと問われると、『ロック』としか云い様が無いのだ。『高揚』し、『興奮』し、そして、『爆発』する。あのカンジがここにはちゃんと有る。決して斜に構えた『ニヒリズム』では無い、『情熱』や『衝動』が音の動機として埋め込まれた『ロック』なのだ。彼らは『ロック』をここまで押し進め、取り敢えず旗を立てた。当然、後進がその旗を超えていくことを確信しながら。

アルバムこれ一枚きりだと思われた彼らも、98年の2nd『Funny Valentine』で復活する。しかもドラムはあのThis HeatのCharles Haywardだ。いやが上にも期待が膨らんだが、蓋を開けてみればCreamの現代版とも云える様なサイケデリックな、いわゆる『ロック』の範疇から外れてはいないであろうモノだった。彼ら自身、もうあそこへは行けないのかも知れない。目指す旗は、未だ色褪せずにいる。


その他のアルバム

Skeleton Crew - Learn to Talk ('84)



Fred Frithが今は亡きオルタナティブ系チェロ奏者Tom Coraと組んだデュオの1st。ギターやチェロを弾きながらバスドラムを踏んで歌う様な、ギクシャクとした隙間だらけの空間の中に、ニヤッとする様なユーモアや、はっとする様な美しい瞬間が現れては消える。

Henry Cow - Concerts ('76)



Fred Frithらが結成した、いわゆる『レコメン系』の代表バンドの、チェンバー・プログレとフリー・インプロが交錯する唯一のライブ・アルバム2枚組(一部『Peel Sessions』のスタジオ・ライブを含む)。Slapp HappyのDagmar KrauseとSoft MachineのRobert Wyattがヴォーカルで参加。




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