2012/05/09

[A-038] Frank Zappa - Jazz from Hell ('86)

遂に竜巻にまで注意を払わなくてはならなくなった様だ。歩道を歩こうがバスに乗ろうが家に居ようが突然死ぬ時代、どうせなら好き勝手色々やってみた方が良いのかも知れない。そんなワケで今日も更新頑張ります(笑)。


[A-038] Frank Zappa - Jazz from Hell ('86)



極たまに、非常に稀にではあるが、Zappa好きのヒトと話す機会が有ったりする。でまあ、当然ながらフェイバリット・アルバムは何か?…と云う話になるワケで、そこでこのアルバムの名前を持ち出すと、相手は十中八九「は?」と云う反応をする(笑)。人間は学習する動物だ。最近はちゃんと『Uncle Meat』('69)や『Hot Rats』('69)、『One Size Fits All』('75)や『Joe's Garage』('79)等の名前を出してお茶を濁したり出来るようになった。褒めて欲しい(笑)。

Frank Zappaは存在そのものがオルタナティブなアーティストだ。ロック創世記から同じく存在し、常に陽の当たる王道の表街道(つまり『ネイティブ』)の方を歩いていたBeatlesに対し「『Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band』('67)はオレの『Absolutely Free』('67)のパクリだ」と息巻いたり、その『Sgt. Pepper's』をパクり返した『We are Only in It for the Money』('68)を出したり等々、裏街道を行くヤクザ者、とまで云っては失礼だろうが(笑)、『大らかな猥雑さ』と『偏執的な繊細さ』と云う相反する顔を持つ『アメリカ』らしいアーティストだった。

彼が影響された音楽が『R&B』と『現代音楽』と云うのも面白いと思う。この二つは確かに『エモーショナル』と『シリアス』な相反する物の様ではあるが、実は共に『アメリカで発展した音楽』であると云う共通項が有るのだ。幼少期に、かの現代音楽の巨匠Edgard Vareseにファンレターならぬファンコールを掛けたと云うのもZappaらしい変態さであるが(笑)、Vareseの音楽は、『Ionisation』('31)に代表される様にパーカッションを中心とした作風で、Zappaのその後の音楽と重ねると興味深い。

Zappaのバンドはパーカッションや管楽器も含む大編成で、しかも全員非常に高度なテクニックを持っていた。それもこれも彼の複雑な音楽を忠実に再現する為には必要であるからで、つまりそこから逆算してみるに、彼のアタマの中では更に複雑な音楽が鳴り響いていたとしても不思議では無い。もしかしたらあれだけの演奏をするメンバーを前にしても、彼は歯がゆい想いをしていたのかも知れないだろう。

そんなZappaにも80年代は訪れる。テクノロジーは発達する。彼のアタマの中の音楽を再現する為の選択肢が、鬼の様なテクニックを持ったバンド以外にも現れたのだ。それが、今で云うDAWの元祖たるミュージック・ワークステーション『シンクラヴィア』だ。楽譜を打ち込めば忠実に自動演奏してくれるベラボウに高価なオモチャ。これ程彼の音楽に向いた環境は無かったのか、80年代半ばに入ってちょくちょくシンクラヴィアに演奏させた曲がアルバムに収録されて行った。

そして、このアルバムはその頂点とも云えるアルバムなのだ。全8曲中、実に7曲がシンクラヴィアによるもの。非常にビート感が強い楽曲が多く、その意味では『ロック』的なのだが、その実リズム・セクションを取り除いてみると、展開が複雑で調性の不明瞭な、実に『現代音楽』らしい響きを持っている。彼にはレッキとした現代音楽作品も有るのだが、アタマの中に鳴り響いていたのは、そのどちらの要素をも含んだ、実にハイブリッドな音楽だったのだろうか。

アルバム中たった一曲、シンクラヴィアによるものではない楽曲『St.Etienne』は、バンドでのライブに於けるZappaのエモーショナルなギター・ソロを中心としたスローな曲だ。『非人間的』とも云えるシンクラヴィア楽曲と同等に並ぶこの非常に『肉感的』な曲は、しかし同等に『変態的(オルタナティブ)』な響きを持つ。それがつまり『アメリカ』なのだろう。彼の『アメリカン・オルタナティブ』が、『ジャーマン・ロック』を初めとする世界中のオルタナティブな音楽シーンに与えた影響は計り知れない。


その他のアルバム

Frank Zappa - You Can't Do That on Stage Anymore, Vol.2 ('88)



1974年の伝説の『ヘルシンキ・コンサート』の完全版2枚組ライブアルバム(実際は二公演の編集だそうだが)。昔、地方都市へひとりで行かさせる様な事が多かったのだが、その時はコレとTodd Rundgrenの『Singles』をCDウォークマンと共に持って行った。夜、ビジネスホテルの部屋で寝る前にコレを聴くと、疲れてようが酔っ払ってようが興奮して眠れなくなった(笑)。

Frank Zappa - Shut Up 'n Play Yer Guitar ('81)



1979~80年のライブ音源の中から、Zappaのギター・ソロ・パートだけを編集した2枚組(アナログ3枚組)アルバム。一番最初に買った『CD』がコレだった。もちろんCDプレーヤーなぞ持ってなかった(笑)。

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