2012/04/29

[A-037] Joy Division - Closer ('80)

ゴールデン・ウィーク、いかがお過ごしでしょうか。わたしはいつもの通りヒマです(笑)。なので、このブログの過去記事を読んでるとやたらと目立つ誤字脱字混乱錯誤を何とか修正しようかなと考えておりますが…やる気さえ萎えなければ…(笑)。


[A-037] Joy Division - Closer ('80)



考えてみれば、『オルタナティブ』とは何とも消極的な表現だ。それは相対的なモノで、『ネイティブ』が有ればこそ成立する存在である。しかし、間違いなくそう表現するしかないモノは有り、新しい呼び名が見つかれば、それは『オルタナティブ』の枠から外れ、めでたくも新しいひとつの『ネイティブ』に生まれ変わって行くのだろう。

Joy Divisionが、70年代末に英国の工業都市マンチェスターから登場した時、やはり人々は彼らの音楽を表現しあぐねた末、『ポスト・パンク』なる『オルタナティブ』同様の消極的な表現を使った。まあ、氾濫する『パンク』に辟易していた人々の揶揄と『次』への期待も込められていたのかも知れないが…。

彼らは地元でのSex Pistolsのライブを観て、前身バンドの結成を決めたと云うが、Joy Divisionの音楽にはジャーマン・ロックからのより多くの音楽的影響を感じる。確かにPistolsもNeu!やLa Dusseldorf等の音楽をヒントに自らの音楽を作り出したと云っても過言ではないと思うが、Joy Divisionから感じるのはClusterやKraftwerk等のジャーマン・エレクトロニクスからの影響だ。

音数少なくハンマー・ビートを叩くドラムに、不安定に揺れ動くアナログ・シンセ、薄く乾いたギターに、淡々としたベース。およそロックとしてのカタルシスを振るい落とし、捨て去った様なサウンド。そんな無機の機械の如くに振舞うロックの残骸に絡み付く腐れ落ちたかつての有機物の様な、うつむいて拗ねる様に歌うボーカル。そして、その全てが、深遠の暗闇から響いてでも来る様に、深いリバーブの空間に包み込まれる。

いや、考えてみれば、この彼らにとっての2ndアルバムが特殊なのだ。本来の彼らはここまで『ロック』を捨て去っては居ない。これは全ての感情を否定した末の『ニヒリズム』なのだ。いや、その境地に達する為の『儀式』と云うか…。

ボーカルのIan Curtisは癲癇持ちで、鬱病で、家庭が有るのに愛人も居て、その全てを抱え込んだ精神は不安定で、まるで破滅を約束された様な人物だ。彼が感情を、人間性を捨てたくなったとしてもむべなるかなと云えるだろう。ステージで発作を起こし、倒れ、痙攣し、思うようにパフォーマンスも出来ない。立ちはだかる『ロック』に苛立ち、その音に自棄をぶら下げて、シニカルに笑い、すすり泣く。

度重なるツアーのお陰でバンドは売れ始め、度重なるツアーのお陰で疲弊した彼は暗闇に落ち込んでいく。そんな中で制作されたのがこの『Closer』だった。自分をこんなにした『ロック』に、彼は復讐したのだろうか。このアルバムが発売されたのは、彼が首を吊った二ヵ月後だった。永遠に生まれ変わること無く、Joy Divisionは『オルタナティブ』へと埋葬され、そして、残された者は新しい『オルタナティブ』…New Orderへと移行する。


その他のアルバム

Joy Division - Still ('81)



活動停止後、New Orderとしての始動前に出た未発表曲集とライブの二枚組。彼らのライブはアルバムと違ってとても直情的で、いわゆる『ロック的』なカタルシスを持っていたことが判る。

Joy Division - Substance ('88)



New Orderの『Substance』と同時期にリリースされたシングル曲集。彼らのシングルはアルバムと違ってとてもポップで、いわゆる『売れ線』を多少なりとも意識していたことが判る。

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