[A-034] Public Image Ltd. - Flowers of Romance ('81)
オルタナティブ・ミュージックは、『不完全』を『不完全』のまま認め、受け入れ、そして成立している。それは一見イビツな体裁ではあるが、故に強烈な印象を残す。『完全』ばかりが『音楽の方法』ではないのだ。
Public Image Ltd. (PIL)はJohnny Rotten (Vo)がSex Pistolsを解散後、John Lydonと名を改め結成した、ポスト・パンク/オルタナティブ・ミュージックの代表格と云われたバンドだ。それは登場した当時、そのサウンドを表すコトバが無かったからに他ならない。まあ、Pistolsの様なパンク・サウンドを期待した人々からの揶揄的な意味も有ったかも知れないが、とにかく、今まで誰も聴いた事が無いサウンド。それがPILの音楽だった。
今聴けば、それはオルタナ・ファンクとか、アンビエント・ダブなど色々云い様は有るだろう。Keith Leveneのノイジーなギターと、Jah Wobbleの重低音ベース、そしてLydonの脱力したボーカルを中心とした、それまでのロック的な高揚とはかけ離れた、冷たく重く乾いた音。直情とはかけ離れてはいるが、しかし一種異様な緊張感が、聴く者を強く圧迫する様なサウンドだった。
だがやはり、改名しようが元々がパンクの問題児が結成したバンド。2nd発表後、その薄氷の安定も崩壊し、すったもんだ有ってベースが脱退。サウンドの『重さ』を象徴する要素を失ってしまった。このままではバンドとも云えない『不完全』な存在でしかない。彼らはどうしたか。
そう、『不完全』を『不完全』のまま認め、受け入れ、そして成立させたのだ。攻撃的なドラムのビートを前面に押し出し、ヴォーカルをエキセントリックに、そしてミニマル・アンビエントなギターやシンセを散りばめ、まるで『ロック』として通用しそうも無い音塊を、そのままぽんと、聴く者の前に投げ出し、したり顔をしてみせたのだ。
この『Flowers of Romance』ほど賛否両論のアルバムは無いだろう。これは偶然の産物だ。ハプニングなのだ。計算は無く、価値も無いと否定するのは簡単だ。だが果たして、これは民族音楽にも通じる力強い響きを獲得している。プリミティブなドラムが、呪術的なボーカルが、ロックを透過して、音楽が持つ根源的かつ究極的な存在感を楽曲に与えているのだ。
このアルバム、ちょっと前までは『ニュー・ウェーブ100選』などでは必ずと云って良い程上位に居た。映画に於ける『天井桟敷の人々』みたいな位置だ(笑)。しかし、最近ではあまり見ない。やはり、その後のPILのゴタゴタ劇もあって『苦し紛れの偶然の産物』と云う評価が定着してしまったのだろうか。
しかし、断言するが、誰も、彼らでさえも、もう二度とこの音楽は作り得ない。その時、その瞬間でしか産み出すことの出来ない音楽。『不完全』は儚く、美しい。
その他のアルバム
Public Image Ltd. - Second Edition ('79)
その2nd。元々は限定缶入り45回転アナログ盤三枚組の為『Metal Box』と云うタイトルだった。その後の通常形態の再発盤のタイトルが『Second Edition』。ベースにフォーカスした音作りにメディアも合わせたカタチだったのだろう。重低音の闇に淡々と沈み込むファンク。
D.A.F. - Alles ist Gut ('81)
バンドからシンセとギターが抜け、ボーカルとドラムが残った。普通はメンバーを入れるなりするが、そこは変態王国ドイツ(笑)、そのままシンセのシーケンスと共演して何ともミニマルでダンサブルなアルバムを作ってしまった。これが後にエレクトリック・ボディ・ミュージックと云うジャンルにまで発展するとは本人たちにも思いも拠らなかっただろう。ジャケットに代表される何ともホモくさいイメージと共に(笑)。
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