2012/03/19

[A-033] Suicide - Suicide ('77)

何かペースが落ちてきている様な気もするが、気のせいと云うことにしておこう(笑)。先は長いぞ誤差のうち(笑)。


[A-033] Suicide - Suicide ('77)



『ロック』とは自由なモノであって、決まったカタチは無い。それ故にあらゆる他の音楽の要素を吸収し、肥大、発展、細分化してしまう。それを『スポンジ』に例えたのはBrian Enoだが、しかしそれでもやはり『王道』は存在する。結局は『ギター・ミュージック』に収斂してしまったロックの現状がそれを表しているのかも知れない。

それの是非は…まあ、このブログを読まれている方なら云いたいことはお分かりであろうが…置いといて(笑)、実は、既存のロックへのアンチテーゼとして捉えられがちな『パンク・ロック』も、ことニューヨークに於いては『ロックン・ロール』と云う王道の延長線上にあった。それは飽くまでも『過激化』であって、『破壊』『破綻』を目指すモノではなかったのだ。『破壊衝動』の方は、DNAやContortionsら『ノー・ウェイブ』勢が受け持っていた様に思える。

そのN.Y.のSuicideを紹介するのに自分が良く用いるのは「ボーカルとエレクトーンでパンクやってる二人組」と云うフレーズだ(笑)。…まあ、実際には全然違うのだが(笑)。しかし、結果的に彼らはその特異な編成から、『過激化』や『破壊』『破綻』とも違う『オルタナティブ』な音楽を産み出している。つまり、それらはきっちりと着地を目指し、そして危ういながらも成立しているのだ。…もちろん、『ロックン・ロール』として。

Alan Vegaのボーカルはエキセントリックだ。だがそれは、『パンク/ニュー・ウェーブ』の持つエキセントリックさでは無い。『アート・ロック』や『サイケデリック・ロック』の持っていた、或る種の『デカダンス』とも云えるモノがそこには有る。The DoorsのJim MorrisonやVelvet UndergroundのLou Reedにも通じる、狂気と厭世と執着が入り混じった『負の気分』とでも云えばいいだろうか。

そして、Martin Revのエレクトロニクス。暴力的なリズムボックス、無機的な電子オルガン、『テクノ』と呼ぶにはあまりに原始的かも知れないそのミニマルな音群は、しかし、圧倒的な存在感でボーカルに対峙する。…そう、それは歌に対して対立する構図なのだ。悪意を感じる程に、その音は音としてあり、アレンジも何も、ボーカルラインについて殆ど考慮されていない。

お互いがお互いに、王道的な『ロックン・ロール』の快感を得る為に、その才能をつぎ込んだデュオ・プロジェクト。Suicideの音楽は、ふたつの強烈な個性を個性のまま投げつけ、空中で瞬間に異化させてみせたのだ。…まるで、きらめきながら佇む現代彫刻と、その前で身悶えする舞踏家の様に。


その他のアルバム

Suicide - Alan Vega + Martin Rev ('80)



2ndアルバム。あのThe CarsのRic Ocasekがプロデュースしている為か、多少エキセントリックさが抑えられて、多少ポップになっている…飽くまで”多少”だけど(笑)。オリジナルのジャケットはそんな『一見ポップでよく見ると1st的グロさ』と云う内容を表していた傑作だったんだけどねえ…。

Silver Apples - Silver Apples ('68)



オーディオ用発振機を組み合わせた手作り電子楽器『The Simeon』を操り歌うSimeonと、シンバルとタムタムだらけのヘンなドラムス『Taylor's Drums』を操るDanny Taylorの二人組が奏でるのは、もちろん当時の流行最先端、明るく楽しい『グループサウンズ』(笑)。…このアルバム長い間ヒトに貸したまま手元に無いので音はうろ覚えなのだが、それでもあの『キモチ悪さ』は覚えている(笑)。『N.Y.のカルトなエレクトロ・デュオ』と云う意味でも、Suicideは正統的な後継者だろう。

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